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【マネックス証券】投信の「値動きと「損益」を牧 力爾氏に聞く

  ある投資信託が上がっているのか下がっているのか、それを知るために見る数字が「騰落率」です。でも、証券会社によっては「騰落率」とは別に「トータルリターン」という項目も見かけます。さらに、自分が保有している(あるいはかつて保有していた)投信についても「トータルリターン」を見られます。

 それぞれどんな意味で、どのように見て活用すればよいのか、わかっているようで意外に知らない投信の「値動き」と「損益」の用語と活用法について、マネックス証券の牧 力爾さんにうかがいました。

 

■Q1:そもそも「騰落率」とは何ですか?
■A1:一定期間の基準価額の値上がり・値下がりを分配金を受け取ったものとして率で示したものです。

 「騰落率」とは、ある一定期間においてあるファンドがどれだけ上がったか下がったかを示した数値ですが、期間中に分配金が出ている場合、期末の基準価額に期中の分配金を加算し、それを期初の基準価額で割って算出しています。そのため、投資家(受益者)が分配金を受け取る場合の実際の運用成果に近い数値となりますが、分配方針の違いによる影響が大きく、ファンド間の運用成績比較にはふさわしくありません。ネット証券など投信の販売会社のサイトでは、1日、1カ月、3カ月…設定来といった期間を区切って、それぞれ騰落率を見ることができます。なお、分配金を加味せずに単純に期間中の基準価額の騰落率を表示している場合もあるので、定義をよく確認しましょう。

 また、販売会社のサイトの投信コーナーやPDF形式で提供される投信のマンスリーレポート(月報)には、騰落率と一緒に基準価額の推移を表したチャートが記載されています。騰落率はチャートと一緒に見ることで、どのような値動きをしているのかがよりわかりやすくなるでしょう。

 

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■Q2:「騰落率」ではなく「トータルリターン」という数値もありますがどこが違うの?
■A2:分配金を再投資したものとして計算した総合的な収益率となりますが、まずは「定義」を確認しておきましょう。

 ネット証券など投信の販売会社や投信評価会社などによっては、「騰落率」のほかに「トータルリターン」を記載している場合があります。また、騰落率の記載がなくトータルリターンだけを載せているサイトもあります。

「トータルリターン」は直訳すれば「総合的な収益率」で、分配金を再投資したものとして計算した運用成果を年率にして表したものです(計測期間が1年未満の場合は年率表記でない場合があります)。厳密に言えば総合的な収益率を計算するには購入手数料や税金も考慮に入れることになりますが、購入手数料や税金は販売会社や個人の状況で変わってくるのでネット証券などのサイト上に記載されたトータルリターンではそうした金額は考慮されていません。

 ところで、同じ「騰落率」あるいは「トータルリターン」という表記でも、記載されている数値が販売会社やマンスリーレポートなどでは多少異なる場合があります。そのほとんどは、分配金の考慮の仕方の違いに起因するものですが、分配金を再投資したものとして計算した運用成果を「トータルリターン」ではなく「騰落率」と表現していたりすることもあるので、注意が必要です。

 

shisan201707728_03マネックス証券の投資信託ページでは、「トータルリターン」と「騰落率」の
両方を記載。 用語横の「?」マークをマウスオーバーすると
用語の意味が表示される(クリックした場合には より詳しい意味を表示。

 

 そこで、ご自身が見ている「騰落率」や「トータルリターン」がどういう数字、金額を使って計算しているのかを必ず確認しておきましょう。販売会社のサイトの投信コーナー、各ファンドのマンスリーレポートでは、計算のベースになった「定義」を記載しているはずです。

 

■Q3:基準価額の値動きは、「分配金支払後」と「分配金再投資」のどちらを見ればいいの?
■A3:どちらも見るべきですが、他の投信と比較する場合は「分配金再投資」が重要です。

 これから買いたいと思っている投資信託については、まず自分が分配金を受け取るつもりなのか再投資するのかを考えてみましょう。受け取るつもりなら、分配金を受け取った後の基準価額がどう変動しているかを見ることも大切です。一方、分配金は再投資するということであれば、分配金を再投資した基準価額を見ましょう。

 ただ、ファンドの本来の収益力・リスクを知るという意味では、分配金を受け取る場合でも、分配金込みの運用実績も見ておいたほうがよいでしょう。また、分配金支払後の基準価額の推移を見るときには、併せて「これまでいくらの分配金が支払われてきたか」という過去の分配金実績も見ておくこと。過去の分配金については、販売会社や運用会社のサイト、もしくはマンスリーレポートや運用報告書などで確認が可能です。

 分配金支払後の基準価額があまり変動なく推移していて、一方で分配金がきちんと継続的に支払われていれば、分配金程度のリターンを生んでいるという理解ができます(もちろん、収益力としては分配金の絶対額がいくらなのかということも重要になってきますが)。

 ということで、「分配金支払後」「分配金再投資」のどちらか一方だけでなく、両方の基準価額の推移をチェックすることが大切だと言えるでしょう。

 

■Q4:「騰落率」や「トータルリターン」、「値動き」はどのように見ればいいですか?
■A4:1つの投信だけではなく、株価指標や類似の投信などと比べましょう。

 ある投資信託の騰落率や値動き(チャート)は、単独で見るよりも、日経平均などの各種インデックス、あるいは類似の投信の値動きと一緒に見ることをおすすめします。

 たとえば、日本株に投資する投信であれば日経平均やTOPIXのチャートと一緒に見ることで、その投信が市場環境によってどのような値動きをするのかを知る1つの参考になるからです。また、ファンドによっては特定の指標をベンチマークや参考指標として挙げています。その場合は、その指標の値動きも併せて見れば、インデックスファンドであればしっかり連動できているのか、参考指標なら指標を上回る運用ができているのかなどを確認できます。

 もう1つ、ぜひやっていただきたいのは、同じような資産に投資している類似投信との比較です。類似のものと騰落率やチャートを比べることで、値動きに何か気になるところはないか、またその投信が他より競争力があるかどうかを知ることができます。

 

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 ネット証券や投信評価会社の投信検索機能を使えば、類似の投信の絞り込みは簡単に行なえます。一度に大体5本程度の投信を一覧表示して比較することができます。

 

■Q5:「騰落率」が高くて基準価額が高い投資信託は、よい投資信託だと言えますか?
■A5:「よい投信」は、騰落率と基準価額の水準だけでは見極められません。

 「騰落率」が多くの期間でプラスで、現在の基準価額が高い、あるいはチャートが右肩上がりというと、なんとなく「これはよい投資信託だ」と思う人も多いのではないでしょうか。

 たとえば、基準価額1万円でスタートした投資信託が、3万円まで上がっていれば、かかった期間や分配金の状況にもよりますが基準価額が3倍になっているので、「パフォーマンスがいい」ということは言えるでしょう。ただし、単純に「基準価額が高いからよい投信、低いからダメな投信」とは判断できません。

 もちろん、過去の騰落率や現在の基準価額の水準も参考にはなります。しかし、よい投信を探すときには、たとえば過去のリターン(騰落率、トータルリターン)だけでなく、その投信が取っているリスク量や、また、リターンをリスクで割って効率のよい運用ができていたかを見る「シャープレシオ」といった数値も見ていく必要があります。

 基準価額の上げ下げを見ることは、あくまでよい投信を探す参考の1つということです。

 

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